つの重要なポイント
1. 人格タイプは母親による子育ての個人的実験から生まれた
彼女は自分ならできると信じていた。1901年に再び男児を出産したが、洗礼を受ける前に亡くなってしまった。それ以降、彼女は唯一の子であるイザベルを人格実験の対象として積極的に取り組み始めた。
個人的な悲劇が原動力となった。キャサリン・クック・ブリッグスは二人の息子を失った後、唯一残った娘イザベルを「乳幼児育成の宇宙実験室」として扱った。彼女は子どもの成長環境を厳格に管理し、「従順さと好奇心」を育むことが人格形成と救済の鍵だと信じていた。
家庭こそが実験室であった。キャサリンは自宅の居間を実験室に変え、体系的にイザベルの行動を観察・記録した。初期の二択質問票を設計し、子どもの特性を評価。子育てを専門職とみなし、子どもが自分に合った「専門知識」を見つける手助けを目指した。
優生学の影響も大きかった。キャサリンの考えは当時の優生学思想に影響されており、人格は生まれつきのものだが、養育によって「鍛えられる」と信じていた。子どもごとに異なる「利用可能な能力」があり、適切な仕事を見つけるべきで、「原始的な平凡さ」を避けるべきだと考えた。これが後のMBTIの「適材適所」理念の基礎となった。
2. ユング理論はアマチュア心理学者に新たな語彙と使命をもたらした
「私はあなたの詩を寓話だと信じています。あなたの夢を作る者がその詩をあなたに渡したのは、まるでイエスが弟子たちに寓話を伝えたように」とキャサリンは書いた。「それは約束であり予言でもある。魂の生命の秘密をあなたに告げていると信じている。」
心の答えを求めて。信仰の危機と中年の憂鬱を経験したキャサリンは、偶然ユングの『ユングの人格類型』に触れた。科学では魂を説明できないと考え、ユングの「内向」「外向」「思考」「感情」といった概念は、自己と他者を理解するための魅力的な現代語彙を提供した。
ユングは信仰となった。彼女はユングを「個人的な神」とみなし、その理論を新たな「救済の方法」とした。熱心にユングの著作を写し研究し、抽象的な思想をわかりやすく変換して一般に広め、「ユング理論は科学的でない」とする懐疑論者に対抗した。
アマチュア分析の実践。キャサリンは自宅を「創造主の宇宙実験室」とし、友人たちと夢研究クラブを組織。メアリー・タックマンの夢の分析なども試みた。専門訓練がなくとも善意があれば、ユング理論を通じて他者が「豊かで完全な人生を送る」手助けができると信じていた。
3. 人格タイプは自己発見と創造のための現代的技術とみなされた
人格タイプは「自己を表現する現代的技術」であり、言い換えれば自己発見と自己ケアに取り組む個人的な問いかけのシステムである。
自己認識の道具。人格タイプは共通の語彙を提供し、人々が「本当の自分」と他者を振り返り受け入れる助けとなる。複雑で混沌とした人生を簡潔な物語に圧縮し、「私は誰か」を自分自身や他者に明確に伝え、個人主義と帰属意識のバランスを取る。
自己創造の可能性。『華麗なるギャツビー』などの小説にある「人格は成功の連続した姿勢である」という考えに触発され、イザベルは人格タイプを創造的な活動とみなした。人格は固定的ではなく、意識的な努力と練習によって形作り、磨き上げられるもので、小説家が登場人物を創造するのと同様だと信じた。
家庭から職場へ。キャサリンとイザベルは最初、家庭内で人格タイプを用い、結婚関係や子育てを探求した。イザベルは後に「適切な仕事を見つける」という理念を職場に持ち込み、人格タイプが人々の専門性発揮と個人的満足の実現を助けると考え、これがMBTIの核心理念となった。
4. 戦時の需要が人格評価を公共領域と高リスク任務へと押し上げた
イザベルにとって、最初の顧客はこの人格検査が第二次世界大戦でわずかながらも役割を果たしたと主張する根拠となった。彼女は後にそれを「小さく目立たず、失望的な役割」と表現した。
第二次世界大戦は触媒となった。戦争の勃発により多くの女性が職場に入り、政府の心理評価需要が急増。イザベルは人事コンサルタントのヘイと協力し、企業にMBTIを導入し、生産性向上の可能性を強調した。
OSSの秘密利用。アメリカ戦略情報局(OSS)はSステーションでMBTIなどを用い、秘密工作員の人格を評価し、最適な任務に割り当てた。イザベルは具体的な利用法をほとんど知らなかったが、この経験によりMBTIを戦時貢献と結びつけ、その重要性を高めた。
完璧なスパイのパラドックス。OSSの評価は「完璧なスパイ」が柔軟性と適応力を持ち、異なる役割を切り替えられる必要があることを示した。これは人格タイプが固定的であるという前提に挑戦し、高リスク行動の予測における人格評価の限界を浮き彫りにした。
5. 人格タイプは企業や教育に浸透し、適材適所と組織効率を強調した
「従業員を人格タイプに合った職に配置すれば、より良く仕事をし、仕事を楽しみ、長く続けることができる」とされた。
戦後の普及の波。第二次世界大戦後、MBTIは企業や教育機関で急速に普及した。多くの企業が採用、昇進、チームビルディングの標準ツールとして人格検査を用い、従業員満足度と生産性の向上を信じ、「人民の資本主義」を創出した。
組織人の台頭。人格検査の広範な利用は「組織人」という概念を生み出し、個人のアイデンティティと組織のニーズを密接に結びつけた。MBTIなどは積極的な人格記述を提供し、従業員に自分の「タイプ」を受け入れさせ、組織内で「適合」する場所を見つけることが幸福と成功をもたらすと促した。
教育分野での応用。MBTIは大学入試や学生指導にも用いられ、専攻選択や人間関係の問題解決、理想的なルームメイト探しを支援した。この応用は人格タイプを学業成功や個人の成長と結びつけ、社会的地位をさらに強固にした。
6. 科学界は人格タイプ指標の妥当性と方法論に疑問を呈した
「最も難しいのはこの検査を他の人格検査と同等に扱うことだ」とある統計学者は書いた。「疑念は消えない。非正統的な起源を持ち、疑わしい理論と結びついている。」
アマチュア起源への偏見。MBTIは正規の心理学訓練を受けていない二人の女性によって発明された非正統的な起源を持ち、学術界や科学界で疑問視された。ETSの統計学者は方法論、データ収集、理論基盤の厳密さに懐疑的で、科学的妥当性の欠如を指摘した。
理論と実証の対立。イザベルはユング理論と自身の観察を信じていたが、ETSのデータ分析はMBTIの重要な主張、例えば二峰性分布や人格タイプの生涯不変性を支持しなかった。この理論と実証のギャップがMBTIの学術的普及の大きな障害となった。
批判者の声。社会理論家アドルノらは人格タイプ自体に潜在的なファシズム思想があると批判し、複雑な個人を分類可能なタイプに単純化し、管理や操作を容易にすると指摘。ETS内部の批判者もMBTIを「大衆迎合の素人の考え」とみなし、真剣な科学ツールとは見なさなかった。
7. 批判を受けつつも、人格タイプは積極的な枠組みとして広く支持された
MBTIは受検者が突然自己認識に気づき喜ぶことが多く、年齢、性別、職業、政治的傾向を問わず、最初は懐疑的であっても支持された。
積極的な自己理解。多くの異常や病理を診断する人格検査とは異なり、MBTIは人格差異を肯定的に捉える枠組みを提供する。各タイプに長所と価値があることを強調し、自己の独自性を受け入れることを促す。この自己肯定的メッセージが広く支持される理由となった。
理解と応用の容易さ。MBTIは日常的で簡単な語彙を用いて人格タイプを説明し、個人生活や人間関係、職業選択に応用しやすい。このアクセスのしやすさが学術界を超え、大衆文化に浸透し、人気の自己探求ツールとなった。
科学を超えた魅力。厳密な科学的検証は乏しいが、MBTIは自己反省や他者理解を促す力を持つ。人格を語る共通言語を提供し、不確実で変化の激しい世界に安定感と帰属意識をもたらした。
8. 商業化により人格タイプ指標は大規模に普及した
CPPはMBTI販売に対する倫理的異議や障害をうまく収めた後、売上を伸ばし続けた。
ETSの撤退。多大な資源を投入したものの、ETSはMBTIの科学的妥当性を証明できず、出版を停止した。これによりMBTIの商業化が可能となり、より柔軟な出版環境で新たな機会を模索できるようになった。
CPPの引き継ぎ。コンサルティング心理学出版社(CPP)がMBTIの出版権を取得。ETSとは異なり、市場ニーズと商業的実現可能性を重視し、テストを簡略化し自己採点オプションを導入。入手と利用が容易になった。
市場での成功。CPPの商業戦略は大成功を収め、MBTIの販売数は急増し、世界で最も人気のある人格検査の一つとなった。積極的なメッセージ、使いやすさ、企業・教育・個人発展分野での広範な応用が普及を支えた。
9. 発明者の個人的物語とテストの普及は鮮やかな対比をなす
イザベル本人は娘、主婦、母、作家、発明家、実業家という多様な顔を持ちながら、彼女の作品が生き続けるためには彼女自身が消えなければならないかのようだった。
忘れられた創始者たち。MBTIは商業的に大成功を収めたが、発明者であるキャサリンとイザベルの個人的物語や貢献はほとんど知られていない。多くの人は彼女たちが女性であることや、彼女たちの仕事が家庭や個人的経験に起源を持つことすら知らない。
犠牲と献身。キャサリンとイザベルは人格タイプの研究と普及に生涯を捧げ、個人生活や職業的野望を犠牲にした。彼女たちの情熱と不屈の精神がMBTI誕生の鍵であったが、商業化後はその献身が周縁化された。
複雑な遺産。MBTIの遺産は複雑であり、無数の人々が自己理解や職業選択に役立てた一方で、科学的妥当性の議論や一部の状況での乱用も批判される。発明者の個人的物語はこの複雑な遺産を理解する上で重要な視点を提供している。
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レビュー
『パーソナリティ・ブローカーズ』は、正式な心理学の訓練を受けていない母娘によって考案されたマイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標(MBTI)の歴史を探求する一冊である。本書は、この性格診断テストの科学的妥当性の欠如を明らかにしつつ、その広範な文化的影響を詳細に検証している。伝記的要素は多くの読者にとって興味深いものだったが、一部には物語の展開が散漫だと感じる声もあった。批評家たちはエムレの筆致と調査を高く評価しつつも、潜在的な偏りの可能性を指摘している。本書は、性格テストの魅力やその社会的意味について考えさせる問いを投げかけ、MBTIの複雑な遺産に対する多面的な理解を読者に提供している。